【弁護士の失踪】
「オー・エイチ・ティー」が05年6月に実施した約21億円の第3者割当増資を引き受けた海外法人3社の代理人、「椿総合法律事務所」の椿康雄弁護士
●「椿総合法律事務所」解散
東証マザーズ上場の電気検査装置製造「オー・エイチ・ティー」(OHT、広島県福山市)株の信用取引で証券会社に多額の損害が出た問題で、港区、六本木ヒルズ、森タワー34階、「椿総合法律事務所」の椿康雄弁護士(53)が、複数の知人らの名前を借り、その借名口座を使ってOHT株を取引していた疑いがあることが3日、関係者の話で分かった。「椿総合法律事務所」は突然、解散することになったとされる。代表の椿弁護士は5月中旬の株価急落後、失踪したという。
●相場操縦の疑いも浮上
椿弁護士はOHTが05年6月に実施した約21億円の第3者割当増資を引き受けた海外法人3社の代理人を務めていた。椿弁護士らが株価をつり上げる目的で借名口座を使った可能性もあり、証券取引法違反(相場操縦)の疑いも浮上しており、証券取引等監視委員会も情報収集している模様だ。
OHT株は、新興企業向けの「東証マザーズ」に上場。大和証券など東京、愛知、大阪の証券会社20社前後に、総額二十数億円の顧客の未払い金があり、多数の証券会社が同一銘柄の取引で損害を被る前代未聞の事態になっている。
●無理をしていたのでは?
椿総合法律事務所は、グッドウィル・グループ(GWG)などと同じ森タワー34階にある。タワー竣工(しゅんこう)直後の03年夏に入居。04年以降は毎年、新人弁護士を複数採用した。椿総合のほかに森タワーに法律事務所を置くのは、実質的には、約140人の弁護士を擁する「TMI総合法律事務所」だけ。 椿弁護士は相当無理をしていたのではないか。
代表の椿弁護士は87年に弁護士登録。企業買収や国際訟務が専門と言っていた。05年まで高額納税弁護士に名を連ねていた。外資系保険会社の日本進出に関与し、00年からは日本法人の取締役に就いていたが、連絡がつかないまま、今年6月末に任期満了で退任した。元ニュースキャスターとの結婚(その後離婚)で話題を呼んだこともある。
代表が消息を絶ったのは5月。約2週間は国際電話などで連絡がとれ、若手弁護士たちに「事務所を閉めるので再就職先を探してほしい」などと伝言を残したが、6月に入ってからは連絡自体がとれなくなった、という。事務所にいた若手弁護士は10人弱。一部は、不明騒動の直前に別の渉外事務所に移籍した。
●引受先の選定にも関わる
関係者によると、OHTは05年6月に21億円の第三者割当増資を実施。行方不明になっている椿代表は、その引受先の選定にかかわったという。その後、知人の投資家=別の証券取引法違反罪で起訴=と協力してOHT株を購入し始め、知人など十数人から証券会社の口座名義を借りたという。
外観上は大量の注文を分散して発注する形をとっており、取引が活発かのように装って株価を不正につり上げた疑いが指摘されている。
株価は05年夏には20万円前後だったが急騰し、07年1月には上場来最高値の150万円をつけた。しかし、5月中旬に暴落。現在は20万円前後で推移している。
●鷲見本誌編集長のコメント
「六本木ヒルズに事務所を構え、10人近い弁護士が在籍していた法律事務所が突然、代表が姿をくらまし、事務所を閉めたなど前代未聞の不祥事。スーパー法律事務所はともかく、10人前後の渉外法律事務所に影響を与えるのではないか」